【コラム】モチベーションのメカニズム
今回は、モチベーションのメカニズムについてご紹介します。
「やる気でねー。やりたくねー。」
こんな経験が皆さんもあるのではないかと思います。
そもそも、やる気とは何だと思いますか?
モチベーションの定義
やる気は、専門用語で動機づけ(モチベーション)と言います。
モチベーションは、「行動を起こす心のエネルギー」です(Vallerand & Thill,1993)。
このモチベーションの分野は、多岐に渡り研究されており、幾つもの理論が発表されています。
例えば、下記のような理論が提唱されています。
1. 達成動機づけ理論(期待×価値理論)
2. 原因帰属理論
3. 社会的学習理論
4. 達成目標理論
5. 目標設定理論
6. 自己決定理論
今回は、自己決定理論について触れていきたいと思います。
自己決定理論とは?
自己決定理論(Deci and Ryan,1985; Ryan and Deci,2002)は、自分の行動を起こす過程で自己決定の程度によりモチベーションが変化するという理論です。
例えば、親、学校の先生、コーチなどに「勉強しなさい!練習しないとうまくならぞ!」などと言われたことは1回はあるのではないでしょうか?しかし、この場合は、「自己決定」の程度が低い(自分でやろうと思ったわけではない)ため、モチベーションが高まらなかったのではないでしょうか?
自己決定理論(self-determination theory)には、連続した3つの動機づけが存在します。
・内発的モチベーション
興味や楽しみにによって行動(スポーツが好き・楽しい・面白い)
・外発的モチベーション
行動が目的ではなく、目的遂行の手段(名声や栄誉を得るために競技スポーツに参加する)
・非モチベーション
故意の欠乏状態(行動しても何も変わらない)
(Deci&Ryan,2002)
外発的動機づけの種類
この3つのモチベーションの中でも、「外発的動機づけ」は段階があります。
質問です!
もし、みなさんは「運動」するとしたら、どのようなモチベーションで取り組みますか?
<外発的モチベーション>
外的調整:医者に言われたから仕方なく運動を行う
取り入れ的調整:運動しないと罪悪感にさいなまれるから運動する
同一視的調整:自分にとって重要なことだから運動を行う
統合的調整:仕事帰りに食事に誘われても、運動することが生活の一部だからスポーツクラブに向かう
<内発的モチベーション>
運動を行うこと自体が目的であり、楽しみや満足に動機づけられている
(スポーツ心理学事典より抜粋)
このように、外発的モチベーションにも段階があり、限りなく内発的モチベーションに近い段階も存在するのです。
つまり、外発的モチベーションが「悪」、内発的モチベーションが「善」とは、必ずしも言い切れませんが、内発的モチベーションを高めることが重要であることは言うまでもないと思います。
内発的モチベーションを高める3つの基本的心理欲求
Deci & Ryan(2002)によれば、基本的心理欲求というものがあり、以下の3つの理欲求にアプローチすることで、「内発的モチベーション」が高まると言われいます。
有能さへの欲求
自分が有能であると感じたい
自律性への欲求
自らが自らの行動の原因でありたい
関係性への欲求
人と関わりを持ちたい
これらに対するアプローチは様々なアイディアがあると思います。
「小さな成功体験を積む」
「目標や練習内容を選手自身が決める」
「チームの関係性構築のために、懇親会を実施する」
まとめ
日本の諺で「好きこそ物の上手なれ」というものがあります。モチベーションの観点でとても理にかなっていると思います。
自分が熱中できるもの・夢中になれるものを見つけて、そこにエネルギーを注いでみて下さい!
スポーツメンタルトレーニング指導士
Ph.D.
小林玄樹