メンタルトレーニングの専門家には一夜にしてなれるのか?

In 未分類 by genju kobayashiLeave a Comment

メンタルトレーニングに関する資格

日本において、「メンタルトレーナー」、「メンタルコーチ」、「メンタルトレーニングコーチ」など様々な名称でメンタルトレーニングの専門家は呼称されます。さらには、メンタルトレーニングの専門家に簡単になれてしまうという現状があります。

しかしながら、「専門家」にそんなに簡単になれるのでしょうか?答えは当然ながらNoです。他の分野を見ても弁護士や税理士など、専門知識を必要とし、国家試験に合格しなければならない上、時間と労力がかかります。

教員免許を持っていない人が学校の教壇に立つこともないでしょう。メンタルトレーニングの分野も例外ではありませんが、誰でもメンタルの専門家と名乗れてしまい、指導までできてしまう現状があります。

メンタルトレーニングはスポーツ心理学に基づくスポーツ科学である以上、科学的根拠に基づく指導がスポーツ現場でもなされるべきだと考えます。今回は、メンタルに関する資格について取り上げて行きます。

日本におけるスポーツ現場における心理面に関する資格として、「公認心理師」、「臨床心理士」、「スポーツメンタルトレーニング指導士(下記、SMT指導士)」が挙げられます。

公認心理師は、国家資格ですが、臨床心理士とスポーツメンタルトレーニング指導士は国家資格ではないものの、それぞれ取得基準や受験資格が設けられています。今回は、筆者が所持しているSMT指導士の資格についてご紹介します。

SMT指導士の資格制度

スポーツメンタルトレーニング指導士は、日本スポーツ心理学会という学術団体が認定している資格であり、2000年から資格認定制度が開始されています。SMT指導士の資格取得条件を簡単に下記にまとめてみます。

  1. 日本スポーツ心理学会の会員として2年以上在会していること。(原則、大学院生以上でなければ会員になれません。)
  2. 大学院でスポーツ心理学あるいは関連領域(体育・スポーツ科学・心理学)を専攻し、修士号を取得した者で、学会が認めた資格取得に必要な単位を取得していること。
  3. スポーツ心理学に関する学術上の業績(研究ポイント)
  4. スポーツ心理学に関する研修実績(研修ポイント)
  5. スポーツ現場でのメンタルトレーニングの指導実績(現場指導ポイント)
  6. スポーツ経験
  7. SMT指導士資格取得講習会を受講すること。(上記1-6までを満たして参加可能)
  8. 資格委員会は認めた最終審査者(スーパーバイザー)から最終審査を受けること。

このように、資格取得には大学院以上かつ研究、研修、現場指導などが必要になります。そのため、SMT指導士を取得するためには、時間と労力がかかります。さらに、有効期限は5年間であるため、更新するためにはSMT指導士の活動と並行して、研修会に参加することや研究業績が求められます。

CMPCの資格制度

また、筆者も所属する北米を主な拠点とする応用スポーツ心理学会(AASP: Association for Applied Sports Psychology)は、CMPC(Certified Mental Performance Consultant)という資格を発行しており、明確な資格基準を出しています。詳しくは割愛しますが、下記のようなに示します。

  1. スポーツ心理学に関わる修士号を取得していること
  2. 学会の認定する単位を取得していること(倫理、スポーツ心理学、スポーツ科学など)
  3. スポーツ心理学の専門家の下で、400時間以上の現場研修(最低200時間以上のクライアントとの直接の関わり、最高150時間のサポート活動、最低50時間のメンターシップ) など

現在、アメリカのナショナルチームをメンタルトレーニングの専門家としてサポートするには、CMPCが必要条件となっています。しかし、日本はまだまだそのような基準は示されておらず、学術的背景を持たずして現場で活動されている方々が散見されます。

決して、そのような方々を否定する気はありませんが、上述したCMPCやSMT指導士には明確な研修や現場経験などの基準があり、一夜にしてメンタルトレーニングの専門家になることはできません。

メンタルトレーニングはスポーツ科学分野であることからも、この記事を読んで頂いた方々には科学的根拠を持った情報や専門家とコンタクトを取ることをお勧めします。

Leave a Comment